2011/10/18

魔の2歳児の行動とその理由

ここ十年くらい、赤ちゃんの行動や心理を研究する発達心理学が(赤ちゃんを観察して、客観的にみることができるビデオや、コンピューターの普及で)とっても進んでいるのだそうです。ムスメが半年くらいのときに、平和教育の研究をしているイギリス人の友人に、もらった本『The Philosophical Baby』と同じ作者の『0歳児の「脳力」はここまで伸びる』は、その発達心理学の立場から乳幼児の行動などを説明していて、育児をする上で(相手を知るという意味で)とってもためになります。

これまで赤ちゃんは「何も知らない」と思われていた事実が、実際にいろいろな実験を行うと、実にいろいろなことを知っているとわかってきているそうです。発達心理学の研究者たちは、たくさんのコドモにいろいろな実験をして、コドモの反応をみてコドモがどう捉えているのか、何がわかっていてわかっていないのか、またそれがどういうことなのか理解していきます。(どういう実験で、なぜそういう事実がわかるのかなどの詳しいことは、本を読んでみてくださいね)

もらってすぐに読んだのですが、最近また少し読み直してみました。そこに、1歳児から2歳にかけて、幼児が他人の心をどういう風に理解していくのか書いてありました。

人というのは、高度に発達した社会的生き物で、赤ちゃんですら、他人に対してどのように対処するのか学ぼうとし、理解しようとするのだそうです。

1歳のコドモは、人に感情があるということをハッキリと理解していて、母親の反応に従って、(母親が笑っている場合はさわってもだいじょうぶ、母親が怖い顔をしているモノはさわらない、など)自分の行動などを決めているそうです。そして、1歳のコドモは、人の感情は自分と同じように作用していると思っているのだそうです。つまり、「自分が好きなモノは、他の人も好き。自分が嫌いなものは、他の人も嫌い。」と、信じているということです。だから、1歳くらいのコドモは、自分が嫌いなものを食べさせられると、なぜそんな仕打ちを受けるのか理解できないのだそうです。それが2歳になると、人には欲求がある、そしてその欲求は人によって異なる、ということを知っているのだそうです。

どういう実験を行うのかというと、14ヶ月のコドモたちと、18ヶ月のコドモたちで行った実験です。まず、コドモが好きなお菓子と、コドモが嫌いなお野菜を用意して、コドモの前でお野菜をおいしそうに食べて、お菓子を不味そうに食べました。それから、コドモたちに「ちょうだい」と言います。14ヶ月のコドモたちは、みな自分が好きなお菓子を渡してくれました。18ヶ月のコドモたちは、(この人、お野菜欲しがるなんて変な人)というような顔をしながらも、お野菜を渡してくれるのだそうです。この実験が何を表すのかというと、14ヶ月のコドモたちは、自分と他人は同じように感じる、と考えているのに対して、18ヶ月のコドモたちは、自分と他人が感じることは違う、ということを理解しているということになるのだそうです。

18ヶ月(1歳半)くらいのコドモは、「自分と他人が違う」とわかっているだけですが、それが2歳児になると、「自分と他人が違う」ということが、どういうところで、どんな風に違うのか、もっと知りたくなるのだそうです。それで、親が「こうしなさい」ということをしないと親はどういう行動をとるのか、「それはしないで」ということをしてしまうと何が起こるのか、とにかく試してみるのです。つまり、親を困らせるような魔の2歳児の行動は、一番身近にいる親の考え方や行動をより深く理解するための試みのようなものだということです。だからといって、2歳児は自分がとった行動で相手がどういう反応を示すか予測している訳ではないので、自分がとった行動で親から怒られると(その結果を知って納得するのではなく)やっぱり怒られると泣くのだそうです。(そこは、2歳児ですよね)

つまり、魔の2歳児が手に負えない行動をとるのは、これから他の人と共存して行きていく社会に適応するために、身近にいる親で人の反応を学んでいる過程な訳で、決してイタズラしている訳でも、親を困らせようとしている訳でもないということです。すっかり社会性を身につけたオトナの頭では理解できないことを2歳児がやったとしても、危険なことであればハッキリと態度で示し、そうでなければ少しおおらかな気持ちで接してあげると、親もイライラせずにいれるのかなと思います。

2歳児が理解をしているのは、他人が自分と違う感情を持っているということだけではありません。他の人が困っていると、相手を思いやる気持ちも持っています。例えば、母親が(仕事で嫌なことがあったとか、だんなさんとケンカしたとかで)泣いているとします。すると、ある2歳児は母親のところにバンドエイドをもってきて母親に貼ったのだそうです。こういう他人に対しての思いやりというのは、ものすごく複雑に人の心や行動を理解していないとできないのだそうです。人に対しての思いやりというのは、(さっきの例でいうと)その時に自分が痛くなくても、相手が痛いと感じているとわかり、そしてどうすればその相手が元気になるのかを知っていないとできない行動、ということになるのだそうです。

何も考えてなさそうで天真爛漫な2歳児も、実は日々いろいろな発見と理解と努力をしているのですね。より深く人の心を理解して、優しく思いやりに満ちた人になれるように、がんばれ魔の2歳児!!



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